宇佐美典也「肩書き捨てたら地獄だった」書評
宇佐美典也氏の「肩書き捨てたら地獄だった」を読了したので、その書評をまとめてみた。
箇条書きで感想まとめ
官僚の給料をブログで公開した人と聞いて、あーあの人ねと思い読んでみた本だったけど、面白い部分があったり面白くない部分があった。以下感想をまとめてみた。
・肩書きの大切さがよくわかる(表題通り)
・その大切な肩書きを捨てたい気持ちもまあわかる
・肩書きを捨てた先のことを一切考えてなかったところが命取りだった。グローバルマッチョ思想は過去の自分への反省か
・官僚時代にやっていた仕事をどう生かすか、前職の経験をどう生かすかが重要だった。もっと上手くいかせていれば無職になって人間関係が崩壊したりすることもなかった。現在の太陽光周りの仕事も、もともと官僚時代から計画的に考えていれば実現できたポジションだったと思う。
・この本のミソは、ちゃんと計画的に転職しないと地獄を見るよ、と言うこと
・官僚をやめた途端に人付き合いがめちゃくちゃになる様子は、とてもリアリティがあった。知らない人にご飯を恵んでもらっておきながら感謝するのすら忘れてしまう描写は心の動揺ぶりをよく表している。この辺りの生々しい地獄の話をタイトル通りもっと書いて欲しかった。
・この本を読む人の大半は肩書きに守られていて、それを捨ててしまうとどうなるか、と言うのは捨てた人にしかわからない。日頃は仲良くしてくれてる人でも本当は自分じゃなくてバックグラウンドも含めて付き合ってることは多いのだろう。
・元官僚の書いた本ということで全体的に内容が官僚っぽいと思った。タイトルは週刊誌みたいだが中身は結構細かい。日本経済全体のことに当たり前に踏み込んでるところでタイトルに釣られた読者はちょっとついていけない気がした。
・途中からセルフブランディングが〜市場価値が〜となり、読むのが辛くなった。
・前半のほとんどを肩書きを捨ててどのような扱いをされるのか詳しく書いていれば、もっと良かったと思う。大半の読者に対して最も効果があるのはこの部分だと思う。
・半導体関連の話はそっち関係の仕事についてる人に取っては面白いと思います。
個人的な宇佐美典也氏の評価
この本を読み終えてみると、宇佐美氏の市場価値は、官僚時代にもらっていた給料とあまり乖離していなかったように思える。ブログで官僚の給料公開した時は確かに少ねえなあと思っていたけど、こんな転職の仕方をするような人だったらそれくらいの給料かもしれないと思ってしまった(笑)
村上世彰氏との比較
官僚から民間に出て成功した人間といえば村上世彰氏が上げられるが、彼と宇佐美氏を比較するとどうしても村上世彰氏の方がはるかにできたんだろうなと思ってしまう。
村上世彰氏はまず間違いなく当時の通産省でもできる方の官僚だった。宇佐美氏は自分でも書いてる通り左遷コースの人間。やることも村上氏の方が「経産省の人間がコーポレートガバナンスを徹底するためにファンドを立ち上げる」という前代未聞のものだったのに対し、宇佐美氏はなんかよくわからない学生起業みたいなことを始めている時点でかなりの差がある。
それに加えて村上氏の方は40で起業と、もう人生を賭けた勝負なのに対して、宇佐美氏は30代になったばかりで官僚としては一仕事終えたかなくらいのところでやめたので、地力がかなり違うと思った。
他にも、村上氏は大島健伸氏と同じ匂いがしてて、確かルーツ的に華僑の人だし明らかに商売向きの顔をしていると思う。仕事のできる中国人の顔だ。宇佐美氏はやっぱマイルドというか、今でもお役所仕事似合ってるなあと思う。村木厚子さんみたいなオーラがすごくて、官僚っぽい顔してると思う笑。
本書にも書かれている通り身の丈を知るというのは非常に大切で、サラリーマン出身で起業して成功した人間は多分どこの組織でもナンバーワンで出世するくらいの実力はあるものだ。楽天の三木谷氏とか興銀時代はバリバリ仕事してたし。経産省といえども左遷コースに載るような人間が起業して成功というのは流石に無理があるのだなと感じた。