今日もまた一日

ビジネス、雑記等のブログ

outerwilds dlc 流れ者の歴史に関する考察

先日、1年近く寝かせたouterwilds dlcをクリアした。1年前は思ったより怖くてやめてしまい、現実も忙しくなったためsteamのゲームの山の中に埋もれてしまった。

 

エンディング到達の感想としては、非常にいいゲームで、唯一無二の体験ができたと思う。ただ、色々と謎多きまま終わった流れ者(以下、シカ族)についてこういう歴史を辿ったんじゃないか?と思うところが出てきたので、自分なりにまとめていきたいと思う。ネタバレを当然含むのでクリア済みの方のみ読んでください。

 

前段:シカ族の謎

日中は黒目で結構可愛いシカなのに、夜になると目が光って怖くなる2面性を持つシカ族。実際のシカも夜は目が光るらしい。その体の特徴と同じように、民族的にも中々2面性の激しい部族だったように思う。nomai以上とも考えられる科学力を持ちながら、一方でカルト教団かのごとき過激な思想と行動も合わせ持っていた。

 

プレイ中にこいつら結構やばくね?と思った方も多いのではなかろうか。また、コロニー内部の探索をしているうちに色々と不可思議な部分に疑問を思った方も多いと思う。

 

私もプレイ中、プレイ後にいくつかの点が気になりだし、色々調べてみた。以下、その疑問点に対する自分なりの考察を書いてみたい。

 

科学力に見合わない野蛮さ。どうしてあんな異常な民族性になってしまったのか?シカ部族興亡史(予想)

 

シカ族の情報伝達手段は口頭以外に文字、そしてあのリールがある。思想を正確に伝えられるあのリールはなかなかすごい発明で、ゲーム内の各所で登場する。しかしその処分方法はまさかの焼却(そしてそのへんに放置)であり、あの狭いコロニーであんな有害そうな物質を放置する野蛮さには驚いた。

 

冷静に考えてリールは再利用するかせめて宇宙に放出したほうがいいのに、焚書坑儒のごとく焼きまくる。眼の神殿も取り壊せばいいのに宇宙の眼の正体に気づいたらブチギレて焼いて倒壊させ、そのまま放置している。

 

私にはどうしてこんなコロニーを作れる文明が中世さながらの蛮族のような行動に出たのか分からなかった。元々こういう気質だったとしたら、宇宙の眼に近づく前に部族内紛争で滅亡してるほうが自然なのではないか?文明力にふさわしい精神性を持っていたnomai達との違いはなんなのか?

 

色々と悩んだ結果、シカ部族がこうなった原因はやはり、宇宙の眼の信号をキャッチしてしまったことだと思うようになった。

 

リールでは序盤から宇宙の眼の信号をシカ族がキャッチしたことが描かれている。信号キャッチ後には神殿を建て宇宙の眼を神の如く崇め、自分の星の環境を崩壊させてまでコロニーシップを作り太陽系に向かっている。

 

私が思うにこの時点から部族全体の精神性や方向性がおかしくなっていたのだと思う。勝手に宇宙の眼を神格化させたり、そのために母星を破壊するのはカルト教団の行動に近い。

nomaiも宇宙の眼の信号をキャッチしたら他の船団に連絡も取らず無我夢中でワープしてああなったが、後で船団に連絡を取るつもりだったのでここまで過激な行動に出ていたわけではない。

 

シカ族の行動はnomaiと比較するとどこか冷静さを欠いた行動である。そしてこの母星の破壊がシカ族の運命を大きく左右するものとなる。

 

シカ部族は母星を崩壊させないとコロニーシップを作れず、太陽系に来てしまった時点で後戻りできない状態になってしまった。それなのに宇宙の眼をよく調べてみたら実際は宇宙を破滅に導く存在で、宇宙の眼自体はその破滅を手伝ってくれる観察者を求めていただけだったのだ。

 

人間が死別や離婚など耐えられない量のストレスによって人格まで変わってしまうように、シカ族も

「母星を破壊してまでここに来たのに報われなかった」

+

「自分達も子孫を残すことなく宇宙の眼によって塵にされてしまう」

 

という2重の耐え難いストレスによって民族全体の思想がおかしくなったのだと思う。宇宙の眼の信号をキャッチした時から危うかった民族的方向性が、決定的におかしくなったのが宇宙の眼の正体を知ったときなのだろう。

 

囚人の言う通り「昔はこんなに怖がりだったわけではない」のだ。宇宙の眼の正体を知る前は立派な文明と相応の精神性を持った優れた部族で、魂を操って仮想空間を作れるほどの科学力を持っていたのだ。

 

しかし宇宙の眼の真実を知ることで部族全体の精神性が破壊され、かつて母星にいた頃とはかけ離れた行動を取るようになってしまったのだろう。それだけ宇宙の眼の正体を知ることが部族全体のエポックメーキングな出来事だったに違いない。

 

ヤバすぎるシカ族の行動の数々。部族滅亡への道のり

 

宇宙の眼の正体を知ってからのシカ族の行動は合理性を欠いたものが多い。半ばヤケクソみたいなものである。ざっとまとめただけでもこんな感じだ。

・宇宙の眼の信号を遮断する

・クロマキーでコロニーを外部からわからないようにする

・裏切り者が出てきたら対話もせず収容する

・宇宙の眼の信号を遮断する装置との通信手段まで放棄してしまう

・裏切り者の収容所を異常に厳重なシステムにする

 

それぞれの行動には謎も多い。以下、これらの行動を取った背景を考えてみる。

なぜ宇宙の眼の信号を遮断したのか?

nomaiが灰の双子星プロジェクトを作る元凶となった遮断装置であるが、ざっくりいえばこれがシカ族なりの宇宙の眼への対抗手段だったのだろう。キリスト教会が地動説を弾圧したようなもので、宇宙の眼を消滅させるのは多分無理だから信号を遮断して、宇宙の眼なんて忘れてしまおう!という発想なのだと思う。

 

結局なんの解決にもなってない行動であるし、のちのnomaiの苦労を考えると他部族への妨害行為だったと言える。多分nomaiだったら宇宙の眼について目を輝かせてもっと研究してただろうなと思う。

 

あれだけの科学力があるのだから、とりあえず宇宙の眼に入らないで数十万年くらい文明を発展させれば部族全体が生き残る手段を思いつきそうだなと個人的には思った。こうやって現実に目を背けなければnomaiといずれ接触していた可能性はあるし、協力して次の宇宙に子孫を残すことができたのではないかと思う。少なくともシカ族とnomaiが接触していたら侵入者のせいでnomaiが絶滅することはなかっただろう。

クロマキーでコロニーを外部からわからないようにした理由

未だに明確にわからない謎ではあるが、意図的にクロマキーを使ったのは間違いない。

nomaiもクロマキーに隠されたコロニーは見つけられなかったという設定なので、シカ族が外部から見つからないようにクロマキーを使用したのだと思う。宇宙の眼を遮断して自分達は雲隠れというなんとも迷惑な行動だが、防衛のためと考えられなくもないし、そもそも他者と関わりたくなかったようにも見受けられる。実際主人公は囚人以外とは会話が成立しないわけで、あれが部族全体の外部へのスタンスなのだと思う。timberhearthに近い環境なのに太陽系に住んでないのは、シカ族が太陽系に来た時点で住める惑星がなかったからなのだろう。

 

個人的にはここもまたシカ族興亡史の分岐点で、母星に近い住める環境の惑星があれば辿る道もまた違ったのかなと思う。やはりあのコロニーにずっといたら閉鎖的な考えに染まってしまうのも分からなくはない。

 

裏切り者をなぜ収監し、セキュリティを過剰にしたのか

 

裏切り者が出たあと、対話せず牢屋にぶち込んだのも部族の歴史としては大きい出来事だろう。量刑とか法律とかの概念がなかったか、失ったのではないかと思う。

 

囚人の顔写真をグチャグチャにしたり、棺の内部に3重ロックをかけ、そのパスワードまで燃やすあたりとんでもないリンチ(私刑)である。部族全体で治安維持法並の思想弾圧が敷かれていたのは想像に難くない。これを機に宇宙の眼の妨害装置まで焼却破壊してしまうのだから、あまりにも過激だ。シカ族全体から見れば囚人は思想犯そのもので、その思想が伝染するのを最も恐れたのでこれほど過激な扱いをされたのだと思う。

囚人が殺されなかった理由

あそこまでやるなら囚人を殺せばいいのでは?と思った方も多いと思うが、見せしめの意味が強いのではないかと思う。よく考えると1人しか収容しないのにあの監獄のセキュリティは過剰だ。模倣犯が出ないために囚人を殺さなかったと考えられる。コロニー内では監獄以外にも、模倣犯が出ないようにしたと思われる形跡があるので紹介したい。

図書館の秘密を明かすリールを取ると部屋がロックされる理由

ゲーム中ずっとこれいるのか?と思っていたのが、図書館の秘密を明かすリールを取ると部屋がロックされるシステムである。一応建物の老朽化で外に出られるようになっているが、元々はリールを取ると外に出られないように作られていたのは間違いない。

 

これは本当に感動した所で、ロックされる理由は会社の金庫の鍵を2重にしてそれぞれ別の人に持たせ、1人では金庫を開けられないようにするのと同じなのだ。だから囚人のような思想を持ったシカが今後出てきたとしても、中々秘密を知ることはできない。

 

これに気づいたときはそこまでやる必要ある?と思った。でもシカ族ならやりそうではあるし、これもまた彼らが選んだ道なのだろう。

 

結末:母星の仮想空間を作ってそこに数十万年も永住すると

ゲーム内で特に明示されてないので、シカ族があの仮想空間に何年いるのかはわからない。nomai以前に太陽系に来てるので30万年近く以上前であろう。闇のイバラが元の形だった時代の話である。それだけの時間をあの精神世界で過ごすというのは恐ろしい地獄である。

 

あの精神世界では子供は産めず、やることといえばリールで母星を思い出したりみんなで合唱するだけ。肉体はとっくに死んでいるのでコロニーに戻ることもできない。囚人が裏切ったときにみんなで一致団結してたのは、久しぶりに目新しいことをするのが楽しかったからなのではないかと思う。

 

ただ、囚人の裏切った時期がまだ肉体の残っている時期だったので、その時は一致団結するだけの理性は残っていたのかもしれない。

 

 

 

dlc導入後、ワープコアを外して死んだ状態で仮想世界にいつづけると、次のマルチエンドに到達する。

 

どれほどの時間が過ぎたのでしょうか? 彼らはもはやわざわざあなたを追いかけてこようとしなくなりました。時が過ぎ、さらに過ぎて、あなたの以前の人生はうろ覚えの夢となります。目覚めることさえできればいいのですが。

 

このことから恐らくシカ族はhearthianの時代にはとっくに精神的には壊れていて、囚人以外はまともな理性が残っていなかったのではないかと考えられる。

 

あまりにも長い時を生きたため自分が誰なのか分からない、かつての記憶もうろ覚えの夢のようだったのではなかろうか。集会所の大合唱も、かつては理性的に楽しんでいたものが今ではかろうじて生きていることの証明になったものなのかもしれない。

 

このようにシカ族の歴史はかなり悲惨で、宇宙の眼によって狂わされた部族だと考えられる。 シカ族の運命については色々と考えさせられる。

 

母星の代わりになる星を見つけて移住できたのではないか?

クロマキーを使わなければnomaiと生存の道を見つけられたのではないか?

囚人の話に耳を傾けるべきだったのではないか?

 

違う結末を考えられるがゆえにとても悲しい気持ちになる。しかし壮大で面白かった。